[査読者 1] 総合点: 3 確信度: 4 著者へのコメント: 問題設定と狙いは明確です。また既存手法との差異で汎用性、Web上ですぐに実 装できる点は大きなメリットであると考えられます。 問題はデモムービーを見てもはたして使いやすいのか、直観的なのかが判断で きない点です。Web上ですぐに実装できるというメリットと、FineSliderが持っ ていたような”何をやっているか視覚的に理解しやすい”という点を切り捨て たディメリットをどうバンランスさせるか判断に迷います。 やはり実際に操作してみないとわからないものかと思い論文からはReferされて いませんが、http://pitecan.com/SnapScroll/wired.htmlでSmoothSnapを試し てみました。使用した感想としては ”理屈でメリットは理解できるのだが、気がつくとマウスのスクロールホイー ルを回している” というものです。いうなれば左脳で理解はできるのだが、右脳は使用してもう れしくない、といった状況です。 新しくかつ実用性を重んじた点の+点と動作が直観的に理解しにくく、かつ実 際の使用でもやはり直観的ではない-点をどのようにバランスさせるか迷いこの 点数にしております。 [査読者 2] 総合点: 2 確信度: 3 著者へのコメント: 本研究ではスライダやスクロールバーなどのGUI部品に対して、ビジュアル アピアランスを変更することなく、容易に現状のwebブラウザ上で実装できる改 善手法を提案しています。提案手法に対して、主張されているような機能要件 は確かに実現されると思われます。しかしながら、論文としてのコントリビュー ションが、登壇発表論文としては若干不足している、もしくは不明確と感じら れます。 1章において2点の問題点を提起し、2章においてそれぞれに対する方策を整 理していますが、この問題整理自体は新規なものとは思われません。問題点1 を扱った関連研究と問題点2を扱った関連研究をいくつか引用されていますが、 本研究はそれらに対して (1)同時に二つの問題を扱うものはなく、本研究が初めてである。 のでしょうか。 (2)同時に二つの問題をあつかう既存手法に対して、webブラウザ上での実装 が簡単にできる新しい手法を示した。 のでしょうか。 私の認識では、引用文献[3]は論文中では問題2の解決策として挙げられていま すが、マウス操作によってコンテンツのスクロール速度を微調整できるので問 題1にも対応していると思います。よって(2)が本論文に相当すると考えら れ、そうだとすると若干コントリビューションが弱いと思います。 もう少し推測させていただき、 (3)スナッピングを用いる、というアイディアが新規である。 ということであれば、私が本論文を読んで最初に思い出した未引用関連研究である http://www.patrickbaudisch.com/projects/snapandgo/index.html に対する差分を強調する必要があるように思います。 この研究は、おなじスナッピングのアイディアを用いてセマンティックなナビ ゲーションをGUI部品(スライダを含む)で行う試みです。 以上の議論から、本論文は明確にコントリビューションを整理すべきだと思います。 その他、気になる点: ・時刻設定とwebコンテンツスクロールにおいてUIが若干異なっているのは、対 象とする問題設定に違いがあるからだと想像されます。(セマンティックな区 切りを自明に事前知識としてユーザが知ることができるかどうか、でしょう か)これらを一般化して、どういう対象にはこういうUIがよい、のような議論 が本研究を豊かにするかもしれません。いわゆる数量的な評価実験が必ずしも 必要とは思いませんが、少なくとも時刻設定、ウェブコンテンツのスクロール 以外にも有効性を示せる例を増やすなどしてはいかがでしょうか。 ・著者も指摘しておりますが、GUI部品のビジュアルアピアランスを変更せ ず利用できる半面、通常とは異なる操作性をユーザに要求することは重視する 必要があると思います。特に時刻設定に関しては、微調整時なんどもタブのと ころにカーソルを戻さないといけないことはユーザを困惑させるでしょう。 その他:誤字 ・引用文献[3] Automatic Seed-dependent --> Automatic Speed-dependent [査読者 3] 総合点: 4 確信度: 4 著者へのコメント: スクロールバーを利用した対象へのスナッピングを容易にすることで,操作性 を向上させるという点に注力しており非常に興味深い研究であると考えます. 論文に提示されている以外にも,再生時間がとても長い動画コンテンツに対す るスナッピングや,地図のパンやズームなどにも応用が可能であり,有用なの ではと考えます. 一方,著者らが挙げている欠点「マウスの操作量とノブの移動量が一致しない ため混乱するかもしれない」以外にも,下記の2点について疑問が残ります. ・汎用性のあるウインドウシステムのスクロールバー部品として実装および提供可能か? ・時分秒のような3段階の深さではなく,時分秒ミリ秒(映像編集ツールなど)などにも適用可能か? 特に,前者については開発者に対して如何に簡単にこうしたシステムを提供で きるかという点に関する情報は,読者にとって非常に有意義であると考えるた め,記述していただくようお願いします. [査読者 4] 総合点: 3 確信度: 4 著者へのコメント: 著者がすでに指摘しているように、マウスの移動量とノブ、および実際のコン テンツの移動量との乖離が問題点となるだろう。慣れてしまえば便利なように も思えるので、スライダーとは違う外観を導入した上で、新しい widget とし て提示してしまった方が受け入れられやすいかもしれない。見た目を共通させ るのであれば、通常のスライダーとしても使えるし SmoothSnap としても使え るというような機能があるとよいだろう。 これは余談になってしまうが、スライダーの空白部分をクリックするとその向 きにノブが規定量移動するというインタフェースは、もう少しどうにかできな いものか。特に SmoothSnap ではそこをクリックさせることでスナップ移動機 能を提供しているので、よりそれがわかりやすい (空白部分にも目盛を入れる など) 提示をお願いしたい。